Deus Ex Magica

 魔術は現実を侵食する幻想である。
 魔術が行使されるたび、この世界は少しずつ現実が消尽され幻想に置き換わる。
 我々の世界はどこにいってしまうのだろう?
 かの知性化戦争からわずか10年で世界は確実に魔術を受け入れ、日常にしてしまった。
 これはあまりにも異常ではないか?
 そして、さらに問題なのは、誰もそれを問題にしようとしないことだ。物が知性を持ち、動物がしゃべるこの世界を、誰も疑問に思わなくなったことが、なにより問題なのだ。
 魔術は現実を侵食する。
 我々の知性も侵食されているのではないだろうか?
 我々の記憶も侵食されて書き換えられつつあるのではないだろうか?
 だとすれば、私はこう結論付けずに入られない。
 これは侵略なのだ、と。
 我々の世界は今、ある種の幻想をつかさどる者たちに侵略されつつあるのだ。
 これは世界を侵し、我々の記憶を侵し、我々の自由意思を侵す、かつてない侵略行為なのだ。
 我々はただちに魔術に対し決別を告げなければならない。
 さもなくば、我々はかつて生きていた世界を失い、この侵略者の望んだ世界に、望むままの生を強いられることとなるだろう。

「この悪しき世界に」
魔法大典、第8条五項に基づき禁書指定