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焼かれる肢体。
磁気凍結した高エネルギーの荷電粒子がプラズマの嵐になって吹き荒れる。なんの防御手段も持たない救命艇は一瞬の閃光に脆く薙ぎ払われた。
でも、私が見つめているのは、遥かな先。
意識するまもなく、浴びた衝撃。真空に放り出される前に吹き荒れる熱に身体は蒸発してかき消える。
聞こえる嘆きの声。
あの子の泣く声。
もう泣かないで。
それは一瞬の幻想。奇跡の交錯。
守るから。
泣き虫のキラ。弱くて、甘えん坊で、意気地なしで。でも、とても優しい・・・。
ごめんなさい。あなたを傷つけてばかりで。
ごめんなさい。あなたを置いていく私。
ずっと言いたかった。
ずっと探していた。
ああ、今、とても素直な気持ちになれる。
だから、だからあなたは、もう泣かないで。
守るから。
本当の私の思いが、あなたを守るから。
拡散する意識。失われていく私。
そして、そう。
私、フレイ・アルスターは死んだんだ。
シャッ・・・。
カーテンの引かれる音。まぶたに差しこむレースのカーテンごしの淡い朝の光。
「お嬢さま?」
遠くで聞こえるマーシャの声。
失われてしまった、遠い遠い日常。
「お嬢さま!」
揺り動かされる身体に、私はまぶたをこする。肌が濡れた感触に、私は自分が眠ったまま涙を流していたことを知った。
・・・眠った、まま?
がばっと勢い良く身を起こす。柔らかなシーツが私の暴虐に抗議するようにしゃなりと滑り落ちた。
「ようやくお目覚めですか、フレイお嬢さま。今日は一限目からある日ではなかったのですか?」
「マーシャ?」「はい。おはようございます」「あ、ええ。おはよう。今日もありがとう」
「ねぼすけなお嬢さまを起こすのがマーシャの仕事でありますから」
陽気に笑いながら、マーシャが私の顔を覗きこむ。そして、少し顔を顰める。でも、すぐに笑顔に戻った。
「早く顔をお洗いくださいな。いい朝でございますよ」
マーシャは何もなかったようにドアを空けると一礼して出ていく。
私はそんな彼女の姿を呆然と見送って、思わず鏡を覗きこむ。ねぐせのついた赤い髪の何も知らない私がそこにいた。
「私、生きてるの?」
部屋を見まわす。
そこはなくなったはずの私の寝室。崩壊したヘリオポリスの私の家だった。
私は思わず叫んだ。
「まさか、夢オチぃ!?」